2007年 05月 16日
海外に長く滞在していると、季節の変わり目の際、日本の食卓の片隅の小鉢にちょっと入って出てきたような、いわゆる端休め的な和の味が恋しくなるときがあります。 私は田舎育ちのせいか、小さい頃から葉わさびやふきのとう、紫蘇や茗荷など、香りが高く辛味や苦味が強い野草のようなものが大好きなのですが、春先になると母が家の前の田んぼで芹を摘んできてくれ、よく芹の胡麻和えを作ってくれました。今でもその味が忘れられず、思い出すと無性に食べたくなる香味野菜料理のひとつです。 芹-おそらくこれはアジアの一部の地域の人間にとってはかなり魅力的な野菜だと思うのですが、世界全体で見るとかなりマイノリティな食材のようでして、海外ではなかなか手に入りにくいのが現実です。私が実際にお目にかかったのは、アメリカで韓国人が経営するアジア系のスーパーで、春先のほんの短い期間に大きく育って少ししなびていたのがちょこっと店の片隅に売られていたのを見ただけ( もちろん買った。珍しいせいか結構高かった気がします。)なので今では私の中では、違う意味でなかなか手が出せない「高級食材」の部類に入ってしまっています。 しかし今回、バルセロナに滞在したおかげで、この”芹問題”に一筋の光が見えてきました。これに似たような味の食材が見つかったのです。 ← それはこれ。人参の葉っぱでした。 今住んでいるバルセロナのアパートは、観光地の中でも、地元の人たちが静かに住むような住宅街の一角にあり、徒歩圏内に沢山のスーパーや個人商店が軒を連ね、沢山の新鮮な食材が溢れるように売られています。 その中でも私は野菜を売る八百屋が大好きで、店の前を通りかかるとよく立ち止まるのですが、ある日若い男性が葉っぱのついた人参を購入しているのを目撃し、それがやけに印象的だったんです。 「葉をつけた人参を八百屋で売っている&しかも買う人がいるとと言うことは、きっと何らかの形でそれが調理されているに違いない・・・まてよ、そう言えば、 工藤久代さんの”ワルシャワ貧乏物語”の中でも、確か胡麻和えにしてポーランド人に出してみて、それが結構好評だったって書かれてあったなぁ・・・。私自身人参は大好きだし、葉も柔らかくておいしそう。一体どんな味がするんだろう。ちょっと購入して試してみよう。」 こんな風にして買ってみて、早速胡麻和えを作ってみたのですが、これが小さい頃食べた芹の胡麻和えの味にそっくりだったんです。軽くゆがいて水を絞り、醤油と砂糖、そしてたっぷりの胡麻で和えてみただけなんですが、ご飯がとてもすすみました。残念ながら今回手元に日本酒やみりんがなく、その代わりに少し多めに砂糖を加える形になったのですが、それでも何とかいけました。胡桃をすり鉢ですったものを混ぜたり、味噌ベースで作ってもおいしく仕上がるかも。そう言えば人参は香味野菜の代表格で、確かセリ科の一種です。きっと体の一番深いところで同じ風味を感じ取っていたのかもしれません。 人参の葉は、形もディルに似ていて、コスモスの葉のような可愛らしい形をしているので、ちょっとした飾り付けにも重宝しそう。余談ですが、ポーランド人はゆでたじゃがいもにバターとディルをたっぷり入れたものを好むので、近いうちにディルの代用品として試してみて、我が家のポー人に感想を聞いてみたいと思います。 それにしても、若い男性を見て、本人より手元にあった葉っぱ付きの人参のほうに興味をそそられるなんて、私も立派にすっかり色気より食い気のようですわ(笑)。 なにはともあれ、またひとつ、あまりお金をかけなくても和の味が楽しめる方法が見つかって嬉しいです。 (←)のんびり参加しています。気が向いたらクリックして頂ければ嬉しいです。
by japolska
| 2007-05-16 19:55
| 海外和食事情
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