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じゃポルスカ楽描帳

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2014年 03月 29日

ポーランドに関する本を読む 4

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八島敬氏著「ちぇしち」読了しました。

これは著者がポーランドのシフェボジンという田舎町の高校に、
海外青年協力隊より体育教師として派遣された3年半の体験談を書いた本です。
協調性がなく、自己主張が強く、さっさとあきらめてしまうやんちゃなポーランドの生徒に対し、
熱く真っ直ぐ力いっぱい奮闘している作者の様子がとても新鮮でした。
とにかく明るく若さがあふれる元気な文章で、読んでいて大変楽しかったです。

一番印象に残った部分は、共産主義を経験したポーランド在住の年配世代の方々の話を聞いたところです。

本によると著者がその話を聞いたのは2001年から2003年の間だったのですが、
彼らいわく、社会主義だった昔は皆公務員で、収入は少ないながらも国民全員に仕事があり、
しかも1つの業務を何人もの人間で分けるとても楽な実務内容で、
日常に必要な物はなかなか手に入らないという欠点はあったけれど、
生きていく上では生活の保障はきちんとされた社会だった。
しかし今の資本主義では、街には物であふれているけど仕事がない。収入はあっても雀の涙。
懸命に働かなくては生きていけない上に、仕事自体があればいい方なので、割に合わない仕事でも辞めることはできない。
犯罪を起こすか海外に出稼ぎにでも行かない限り、今の餓死しかねない生活から脱出できそうにもない。
このような出口のない苦しい生活に多くの年配者が絶望を感じ、
今の自由な資本主義よりもむしろ昔の社会主義時代がいいと懐かしんでいるのだそうです。

物はないけどプレッシャーやストレスとは無縁な人生と、物はあるけどプレッシャーもストレスもある人生。
人間の幸せとはいったいなんだろう、自分が一番幸せに感じるのはどんな状態だろうと、
この本を読んで色々考えさせられています。

あとはポーランドにThe Boomの「島唄」を紹介して一大ブームを作り、色々な縁がつながって、
最終的には宮沢和史氏がポーランドまで訪問してコンサートを開くほどまでになったくだりのところはとても感動しました。
これを読んだ後、Youtubeでかなり久しぶりに「島唄」を聞いたんですが、やっぱり曲調が独特でいいですね。
ちなみに音楽好きの我が家のポーランド人も、私が車の中で日本のCDをかけると大音量で聞きたがります。
一時期、松任谷由実氏の「砂の惑星」や、井上陽水氏の「なぜか上海」などを繰り返し聞いていました。
彼曰く、日本の歌謡曲の曲調はポーランド人の中にない、全く違うテイストのものなのだそうです。

なにはともあれ、笑い満載のとっても面白い内容だったのに、
なぜか途中で何度もじーんとしてほろっと泣いてしまった、
そんな不思議な魅力を持つ本でした。




by japolska | 2014-03-29 09:08 | Wonderful Books


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