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じゃポルスカ楽描帳

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2006年 04月 03日

旅の余韻

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昨日お会いした夫の同僚の方から、
イスラエルからのおみやげとして、
この可愛い「キッパ」を頂きました。






「キッパ」とは、ユダヤ人の男性がかぶる帽子(?)の一種のことです。
帽子、と言っても、細い糸で編んだ薄いお皿のような形をしていて、
どちらかと言うと「かぶる」というより、「頭に乗せる」という感じになるので、
そのまま頭に載せて外に出るのは不可能。小さなピンで留めて落ちないようにします。
イスラエルでは、エルサレムのユダヤ人地区やお土産屋さんでは、
さまざまな色やデザインのキッパが売られているのを見かけました。
乾燥とオリーブと石造りの歴史ある国、イスラエル。
夫もそこで過ごした日々を思い出したのでしょうか。
家ではかなりご機嫌でこの帽子を頭に乗せて過ごしています(笑)。

昨日、近くのブックオフで、村上春樹氏のエッセイ本を数冊購入しました。
(余談ですが、村上春樹氏ってとても人気があるんですね。
私はいつもブックオフでは、文庫も漫画も105円のコーナーから本を探していくのですが、
彼の本はこのコーナーにほとんどないのです。特にエッセイの文庫本は見つけるのに至難の業。
たまたま私だけに発生している現象なのでしょうか?)
その中の1冊で、旅をテーマにした本があったので紹介します。

旅の余韻_e0070787_22183085.jpg

・「雨天炎天ーギリシャ・トルコ辺境紀行」 村上春樹 新潮文庫
ギリシャ・トルコを訪れた作者の体験記。前半をギリシャ編、後半がトルコ編でした。
やはりこの人の文章(とくにエッセイ系)は本当に読みやすいですね。
私にとってはすいすいと飲めるミネラルウォーターのような感じで、どんどん先に読み進める事ができ、
普段は読まなくても平気なのですが、2時間程暇を潰したい時には思わず手を出したくなる、
再読したくなる本を書いてくれる作家さんです。
雰囲気的には、沢木耕太郎氏の「深夜特急」をマイルドにしたような感じがしました。





それはさておき、中身について。
彼はこの本の中で、ギリシャでは「ギリシア正教」の本山・アトスという場所を訪れています。
女性は動物すら足を踏み入れる事が出来ない、男性専用の「聖地」で、
彼は深い山の中にあるいくつかの修道院を尋ねて回っていくのですが、
行く先々で、普段の日常では決して体験できないような過酷な出来事に遭遇します。
(特に食べ物について。でて来た食事内容とその描写がなかなか面白いです。)

私はこの本を読んで、イスラエルで過ごした日々を思い出しました。
私の場合、彼が体験したような過酷な出来事にはほとんどあってはいないのですが、
宗教色が強い国や、気候的や経済的に何かと厳しい国などで、
個人旅行者が時に陥ってしまう「選択が無い(もしくは与えられない)状態」について、
とても同感できる部分があり、またその時の想い出が思い切りフラッシュバックしてきたからです。

紀行の締めくくり部分もとても印象的でした。
タフでハードな日々を過ごしたアトスを離れ、冷えたビールとおいしい食事にありつけた作者。
「もう誰がカビのはえたパンなんか食べるかと思う。」という気持ちになったそうですが、
不思議な事に数日経つと、アトスが恋しくなってきたそうです。
理由として、彼はこう書いています。

「・・・・そこでは人々は貧しいなりに、静かで濃密な確信を持って生きていた。
そこでは食べ物はシンプルだけど、いきいきとした実感のある味をたたえていた。
猫でさえカビつきパンを美味しそうに食べていた。」


これを読んで私は、すごく同感、というか、すとん、と落ちるような納得感を覚えました。
ほぼ無宗教である私たちにとって、正直言うと、時に不自由や苦労を強いられたイスラエルでの日々を、
嫌いになれずむしろ切ないくらい懐かしい気持ちで思い出されるのは、
宗教に対する人々の深い敬意と誠実さ、そしてそこから発生する確固たる人生への自信と感謝の気持ちを目の当たりにしたからかもしれない、と思いました。

by japolska | 2006-04-03 23:04 | 雑談


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