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2017年 06月 19日

北国の人たちに関する本を読む 18

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パール・バック著/新居格訳/中野好夫補訳”大地”読了しました。


これはアメリカで生まれ中国で育った女性作家・パールバックによる、
中国の大地に根ざして生きる人々の長編大河小説です。
この作品は「大地」「息子たち」「分裂せる家」の3部作から構成されており、
世界30か国以上で翻訳され、1938年にはノーベル文学賞も受賞した名作です。


第1部の「大地」では、まず貧民出身の王龍という農民が登場します。
彼は貧乏のどん底から、奴隷出身だけど非常に聡明な嫁をもらい、
その後あるきっかけで土地を購入するチャンスに恵まれます。
そして彼はその土地から収穫を得て、それを金に換えた後、また土地を買い増し、
最終的には一代でその地域での大地主にまで成長します。
権力、金、息子、美しく若い愛人、有り余る自由な時間など、
普通の一般人なら欲しがるであろう全ての物を手にした王龍。
しかし結局彼は自分の死ぬ間際に、本当に自分が心から愛しているのは、
種を蒔き手入れをすれば毎年実りをもたらしてくれる”土地”だという事に気が付きます。


第2部の「息子たち」では、王龍の残した3人の息子達が中心になります。
父が残した遺産を遣い、ひたすら贅沢に溺れる長男・王大に、
父が残した遺産を遣い、抜け目のない商人になる次男・王二に、
父が残した遺産に興味を持たず、家を出て軍人になる王三のそれぞれの生き方が綴られていくのですが、
結局は誰も父のように農民にならず、父・王龍が苦労して手に入れた土地もまたバラバラになってしまいます。
そして次第に物語は、最終的に王虎将軍と呼ばれるほどの軍人になった三男の人生に焦点が当てられていきます。


第3部の「分裂せる家」では、王虎(王三)の息子の王淵が登場します。
父・王虎の軍人としての生真面目さと、祖父・王龍から受け継いだ土地への愛情を受け継いだ彼は、
中国が新時代へと移り変わっていく渦中に巻き込まれ、様々な経験を積み重ねていきます。
時代の激動の流れに翻弄されつつも、その中で彼は、
新しい時代の世の中に起きる様々な事柄や人々に出逢い、
それらに接触する度に自分の中で生まれては消える説明のつかない感情等は何なのかという事と、
自分が心の底から本当に求めているの一体は何なのかを真剣に考え抜き、
新時代に対する自分なりの答えを必死に見つけようと悩み苦しみ、そしてもがきます。
そして最後には、彼が憧れ焦がれて止まない、ある素晴らしいものを手に入れたところで物語が終わります。


合計4冊の長い大河小説だったので読み終わるのに多少時間がかかりましたが、
さすがノーベル文学賞を受賞しただけあって、非常に素晴らしい作品でした。


読了後、個人的にすごく感じたことは、
この作品の中には、例えどんなに時代が移り変わっていっても、
今でも現在世界中にいる、ありとあらゆる種類の人間(※人種という意味ではありません)が登場しているという事と、
また舞台は中国というアジアの一国にも関わらず、
これまた世界中のありとあらゆる人々が持ち合わせている、全ての感情や本音が綺麗ごと抜きに書かれているという事、
そして上記内容に加え、どの人間も心の中に持ち合わせているであろう、一番醜い部分と一番綺麗な部分の両極を、
それぞれ登場人物を使って上手に対比させながら見事に物語の中に織り込ませてあったので、
読みながら私も、自分の中に存在するいろいろな感情を容赦なく揺すぶられてしまい、
時には恥ずかしい思いをしたり逆に誇らしい思いをしながらも、
それぞれの登場人物たちに大変な親近感を抱きながら読み進めることができました。
読んでいる間、ものすごく楽しかったです。


何はともあれ、私にとってこの作品は、
「私の人生の中で読まなくてはいけなかった最重要な本」
だったと、読了後しみじみ感じました。
この本に出逢えて心からよかったです。
誰にでもお勧めできる超名作ですが、ただ長いことは確かに長いので、
特に三国志が好きな方や中国に興味を持つ方だったら間違いなく楽しめる作品かな、というのが私の感想です。


ちなみにこの作品は翻訳物の上、登場人物もものすごく沢山出てくるのですが、
理解できない部分など一つもなく、また登場人物で混乱することもなく、
大変スムーズに気持ちよく読み終えることができました。
翻訳された方々のご苦労と深い配慮に心より敬意を払います。


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by japolska | 2017-06-19 09:38 | Wonderful Books | Comments(0)


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