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じゃポルスカ楽描帳

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2006年 01月 21日

Respectable Movies

今日はドイツで製作された「9000マイルの約束」という映画を見ました。

9000マイルの約束(原題:SO WEIT DIE FUSSE TRAGEN)

内容は上記のウエブサイトにも書いてあるのですが、
極寒のシベリアから逃亡したドイツ人の脱走兵が、
3年もの月日をかけて祖国ドイツへ戻るという、
実際にあった出来事をベースに作られた作品だったのですが、

ものすごくよかったです。超お勧め。

マイナス50度にも達するシベリアの地で、
絶望的な収容生活にピリオドを打つべく脱走を試みた1人のドイツ青年。
彼はまず祖国ドイツのある西側ではなく、協力者の助言に従い、
寒さのより厳しい北への進路を選びます。

360度見渡す限り雪に覆われた広大な大地。
容赦なく吹き付ける冷たい風に、
人影も家も何も見えない地平線が、
ひとりぼっちで歩く彼をぐるりと取り囲む。

途中、アザラシを捕獲しては、その体を切り、
凍傷になりかけた足を入れ暖めたり、
何もない雪の平原にたった1本立っていた小さい枯れ木に希望を見出だしたり、
大変過酷な条件下の中でも、彼は生き延び、進んでいきます。

その後も極寒の地に定住を見出しているユッピック族や、
思慮深いユダヤ人に助けられたりしながら、
イラン国境まで辿り着き、そこを超えようとするのですが・・・。

必見だと思ったのは、どんなに暖かい部屋で見ていても凍えてしまうような気にさせられる、
想像を絶した厳寒期のシベリアの映像と、
原住民ユッピック族の習慣や生活の様子を映している場面、
そして、まるで銭形警部のように執拗に彼を追うソ連軍の中尉との、
後半部分で見られる絶妙な運命の出会いの3つでした。

この映画のよかったところは、この映画自体、戦争映画のひとつに入るかもしれませんが、
どちらかというと戦場で戦い勝ちながら生き残っていくシーンを見せつけるような戦争映画の大道のパターンではなく、
その人個人が持っていた能力や運、生命力など、いろいろな要素が組み合わさって、
最終的には、まるで岸辺に打ち上げられた流木のように生き残る事ができた、というところと、
世界でたったひとりが体験した極めて異例な経験をリアルに表現してくれた上で、
誰の身にも起こりうる"偶然"を通じてかろうじて繋がっていく"小さな幸運の存在"というものを観客に見せてくれたところだと思いました。
ノン・フィクションには、フィクションには決してない"深み"というものがある気がします。
他に似た映画では第2次大戦中の旧ソ連軍の名スナイパーが主人公の「スターリングラード」や、
ナチスドイツにより迫害を受けたユダヤ人ピアニストが主人公の「戦場のピアニスト」というものがあるのですが、
これらも実在した人物を基に作られたそうで、これらもとってもお勧めな作品です。

とにかく、最後の最後までかなりハラハラさせられる映画でした。
最初の方は少し目を覆いたくなるような場面があるかもしれませんが、見ごたえはバッチリ。

素晴らしい映画は人類の宝物です。

by japolska | 2006-01-21 23:59 | Respectable Movies


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