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2017年 02月 14日

北国の人たちに関する本を読む 5

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福のり子氏著”海の男たちのセーター”読了しました。
こちらの冊子の中で著者は、実際にスコットランドを含む英国海岸地帯の殆どの地域を訪問し、
各地で昔から細々と続いている、生活のための実用的な手編み文化について紹介してくださっています。


私は幼い頃からずっと、複雑な縄編みの組み合わせによって仕上げられたアランセーターの類や、
様々な色の細い糸を使って繊細な模様が繰り返し綴られているフェアアイルセーターの類になぜか非常に惹かれる傾向があり、
これらに関する本を探していくうちに、上記冊子に出逢いました。


こちらの本では、アランセーターやフェアアイルセーターはもちろんの事、
ガンジーセーターやフィッシャーマンセーター、そしてサンカ手袋などが、
それぞれのセーターや手袋の発生のきっかけから今日までの歴史を丁寧に追いながら、
豊富な写真や各地で見聞きした取材報告と共に大変詳しく掲載されています。



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私が個人的に一番衝撃を受けたページはこちらでした。
1887年にスコットランドの漁港にて、女性たちが鰊の加工に従事している姿を撮った1枚らしいのですが、
少し見づらいかもしれませんが、右のページに歩きながら編み物をしている女性の姿が写し出されています。
この時代の女性はどんなに少ない空き時間も無駄にせず「編みあがった作品を売ってお金にするために」編み物に没頭していたそうです。



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その頃のこの地域に住む少女達は、こんなに小さい頃から編み物ができたそうです。
ホントすごいな当時の女の子たち・・・でも上記写真の姿はどれもとても美しくて、大変神聖に思えます。



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スコットランドの海辺に生息する羊たちです。
冊子を読むと、スコットランドを含む英国海岸地帯は、木もまともに生えず貧しい荒涼な土地柄で、
羊たちも牧草を十分に食べる事ができないので、海辺に流れ着く海藻を食べて生き延びているそうです。
でもこの海草を食べる習慣のおかげで、これらの羊たちから取れる毛はとても品質がいいのだとか。
だから自然発生的に編み物文化が非常に発達したらしいです。



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伝統的なフェアアイル。昔はこのような色を使うのが正統だったとか。
もうあまりの模様の細かさと色合いの鮮やかさにまぶし過ぎて眩暈がします(T_T)。
この完成度は全てを超越して神様によって作られたとさえ思える程の素晴らしさです。



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サンカ手袋の写真です。こんな手袋が世の中に存在していたなんて・・・。
ちなみに当時の作者が書かれた取材記録を読んでみると、
取材に応じてくれたサンカ手袋を編める地元の女性は、4日程で1対の手袋を編み上げる事ができ、
しかもその手袋を日本円で約1,500円で売っていたのだとか!!!

続きを読んでいくと、その女性曰く、
「お金が目的ではない」のでその値段を設定したらしいですが、


いや、どう考えても安すぎるでしょう!!!




と、私は心の中で思い切り突っ込みを入れさせて頂きました。
(私だったら腹黒いので10倍くらいの値段を設定するかもしれません・笑。)


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ちなみにサンカ手袋の指の部分は三角錐のようにして編まれているらしく、
着け心地及び使い心地は抜群なのだそうです。
なんて細やかな心遣いなんでしょう・・・この手袋、私も欲しいです!!!



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こちらはビクトリア時代の編み棒だそうです。
もうあまりの細さと優雅さに究極の美を感じずにはいられません(号泣)!!!
ちなみに昔の貧しい英国沿岸部に住んでいた女性達は、
初期の頃は木の枝や鳥の羽を編み棒にして編み物をしていたそうです。


なにはともあれ、この本は、
私が今まで読んだ編み物関係の中では飛びぬけて素晴らしい1冊でした。
こちらの本は古本だったのですが、どうしても手に入れたくて、
オークションで当時の値段と同じ価格で落札しました(@3,500円)。


現代の先進国は物質的に豊かなので、それほど大金を支払わずとも、ある程度品質が保証された物を何でも簡単に手に入れることができますが、
この時代のような、身の回りに物自体が少ない上に、また新しく手に入る物も非常に限られている厳しい状況下の中で、
それでも、その限りのある物と、絞りに絞りまくって出した知恵と、時間を最大限に利用し弛まぬ努力を使って編み上げられた、
「全ては生きていくための」セーターや手袋、そして当時の女性達の人生に、私は深い畏敬の念を感じずにはいられないのです。


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by japolska | 2017-02-14 08:23 | Wonderful Books | Comments(0)


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