2014年 03月 22日
岡上理穂氏「ワルシャワに市民の歌声がきこえる」読了しました。 この本は1980年頃に作者が演劇を学ぶためにワルシャワ大学に留学した時の体験談で、 作者が知り合ったポーランド人との交流を中心に、 当時のポーランド国内の市民の生活ぶりを詳しく紹介してくれている1冊です。 読んだ感想は・・・正直かなり生々しかったです。 というのも、私が何度も読んだ名著・工藤久代氏の「ワルシャワ貧乏物語」でも当時の物資不足の話が出ていましたが、 どちらかというと彼女の本では、「物資不足だけど何とか知恵とコネを使って」自分で日本食を作り出し楽しく生活するという、 工藤さん自身の行動力を軸に、割と前向きで明るいニュアンスが入っていたのですが、 こちらの本では、「物資不足だからどんな形ででも」物を手に入れなくてはと苦しむ市民の憂いや憤りを作者の視点からの"報告"みたいな感じで書かれていたので、 一般的なポーランド人の台所事情が詳しく分かると同時に、 作者の社会主義での現実を目の当たりにしたショックとそこで暮らすポーランド人のやるせない気持ちがひしひしと伝わってきました。 それにしても。 外国からのお客を喫茶店に招いても、そこには紅茶しかなく、その紅茶もものすごく高い値段だったとか、 自国の通貨が世界的に通用しないがゆえに自国人にも信頼されず、あっという間にその価値が無くなっていく様子とか、 若い男の子がたまたま売られていた大きな鍋を見て、「自分では使い道が見つからないけれど、物が買えるチャンスなんてそうそうないから」といった理由でその鍋を買ったとか、 作者がずっと英-ポ辞書を探していたんだけれど、結局見つかったのはポーランド滞在4年目で、しかも市価の4倍の価格を支払ったとか、 アンダーグラウンドで売られていた本を大学教授がわれを忘れてむさぼるように読みふけていた、とか、 あまりにも物不足なのでみんながこぞってパスポートを入手し、ビザのいらない隣国へ行き、一晩安い商品を買い自国で高く売る、とか、 日々の食べ物や日用品は1品に対し何時間も並んで買うのが普通で、それでも手に入らない場合もある、とか、 こんな世の中ってホントにありなの・・・あまりにも切なすぎるだろ・・・と、なんともやりきれない思いで読みました。 それと同時に、この本を読んで、 我が家のポーランド人がお金よりもむしろ物にこだわるのが改めてよく分かりました。 いくらお金を持っていても、物の価値がいきなりすごく上がったり、 逆にお金の価値がある日突然下がってしまったら、お金はただの紙になってしまい全てが無駄になる、というのが彼の持論なんですが、 世界的に見ても抜群の安定性を持つ日本円と、量的にも質的にも豊かな物資に囲まれ、 日本人特有の消費より貯金が美徳という概念で育ってきた私にとっては、 彼の主張は頭では理解しつつもなかなか全てを受け入れることができませんでした。 でもこの本を読んで、物の価値が上がらない/お金の価値が下がらない内に、 自分の欲しいものや人を幸せにする長く使えるいい物を手に入れるということは、 実は豊かな気持ちで人生を歩んでいく上で、実はものすごく大切なことなんだなぁ、と思えるようになりました。 引き続きポーランドに関する本を読んでいきたいと思います。
by japolska
| 2014-03-22 04:34
| Wonderful Books
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